ある日、とあるマンションの区分所有者宅で漏水が発生した。
築年数が進んだマンションではよくある話だが、このケースは違った。
ここから始まったのは、住民を“欺く構造”との静かな闘いだった。
まず、漏水調査には管理組合の保険が使われた。
この時点では誰も疑っていなかった。
その後の復旧工事は、区分所有者本人の加入する火災保険で対応することに。
「これで一件落着」と思いきや──事態はそう簡単ではなかった。
工事の完了後、住戸には不快なカビ臭が残り、床はぶよぶよとたわんでいた。
家主は咳が止まらず、健康にも影響が出ている。
明らかに施工不良。住民は当然、やり直しを求めた。
すると、管理会社はこう言った。
「保険会社に出向いて、“追加工事”という形で処理する方向で話をつけましょう」。
つまり、「もう一度保険でなんとか通す」という話である。
違和感を抱いた住民が保険請求の書類を見直してみた。
その瞬間、決定的な事実が判明する。
保険会社に提出された「漏水原因を示す写真」が、
実際に住民が保管していた劣化した水道管とまったく違うものだったのだ。
つまり──偽の写真が提出されていた可能性がある。
ここで思い出されたのが、漏水調査の当日、管理会社担当者が言い放った一言。
「これは保険が使えないやつですね」。
そう、最初は正直に“保険対象外”と認識していたのだ。
しかし次の瞬間、「大丈夫です。任せてください」と笑顔で続けていた。
──その“任せてください”の意味は何だったのか?
今、その笑顔が冷たい仮面に見える。
住民は呆れ、怒り、そして不安になった。
保険金詐欺。もしそれが事実なら、詐欺罪で刑事罰に問われうる内容である。
組合がこのまま“共犯”のような立場に巻き込まれるのでは?
そんな疑念から、住民たちは弁護士に相談することを決めたという。
この話が示しているのは、
「保険が通るならやる」「通らなければやらない」という、“道徳”を失った管理」の姿。
保険金という“他人の財布”が動くところには、モラルが崩れる隙間がある。
住民は、自分の家を信じて住んでいる。
そこに関わる管理会社が、保険金目当てに“架空の写真”で申請するようなことがあれば、
それはもはや、生活と信頼への重大な裏切り行為である。
管理会社は“専門家”かもしれない。
だが、正義の基準を持っていない専門家ほど危険なものはない。
これは、すべてのマンションにとって“対岸の火事”ではない。
次にその火が燃え広がるのは、あなたの住む場所かもしれない。


