疑念は「裏付け」に変わった

以前の記事で紹介した「火災報知受信機の交換」
理事の方が抱いた「管理会社はマンションごとに“利益を回収する枠”を見ているのではないか?」という疑念は、その後の出来事によってますます強まり、単なる憶測ではなく“裏付け”へと変わっていきました。

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100万円超の工事報告書、その中身は…

工事終了後、理事会に提出された報告書は1枚ものの簡素な資料でした。
「受信機を交換しました」と記された短い文言のほかは、日付と施工会社名だけ。

理事の方は愕然としました。総額100万円を超える工事であれば、本来は以下のような記録が残されるはずです。

  • 施工中の写真
  • 取り外した旧機器の型番と状態
  • 新しく導入した機器の型番・仕様書
  • 点検結果の詳細記録

しかし、どれも添付されていませんでした。
「これでは、何をどのように交換したのか確かめようがない」
理事会で問いただしても、管理会社の回答は「通常の様式ですので問題ありません」というものだけ。説明責任を果たそうとする姿勢は全く見られませんでした。

住民の反応──募る怒りと不信感

報告書を回覧した際、住民からは強い反応が返ってきました。
「こんな紙切れ一枚で済ませるなんて、私たちをバカにしているのか」
「100万円を超える支出なのに、証拠が何もない。これでは家計簿をつけないのと同じだ」
「安全のためという大義名分に隠れて、不透明な工事を押し通しているのでは」

特に年配の住民からは、「昔は管理会社にお任せで安心だと思っていたのに、こんなことがあるのか」と落胆する声も多く聞かれました。住民の信頼は急速に揺らいでいきました。

他マンションとの比較で見えた違和感

追い打ちをかけたのは、別の理事が入手した「友人の住むマンションの議案書」でした。
同じ管理会社、同じ築年数、同じ火災報知受信機の交換──それにもかかわらず、費用はわずか35万円。36世帯のマンションでは100万円超だったのに、90世帯のマンションでは3分の1以下の価格で済んでいたのです。

しかも、その友人のマンションでは給排水ポンプや電気設備など、数百万円規模の工事提案が同時に並んでいました。
「うちでは防災設備で大きく請求、向こうでは水回りで大きく請求」
──まるで管理会社が、マンションごとに“どこなら住民が疑問を抱きにくいか”を見極めて、利益を厚く取る場所を決めているように感じられたのです。

理事会に広がる議論

理事会は一気に不信感に包まれました。
「なぜうちのマンションだけ、ここまで高額なのか」
「相見積もりを取らせないのは、意図的なのではないか」
「安全を理由にすると、住民が反対しづらいことを狙っているのでは」

ある理事はこう語りました。
「結局、管理会社は“反発の少ない領域”を狙って利益を回収しているのだろう。火災報知機や防災設備は、命に関わるものだから誰も強く異を唱えにくい。だからこそ、そこを突いてきたのだと思う」

こうした声が相次ぎ、これまで「任せておけば安心」と思っていた住民も目を覚まし始めました。

住民の間で高まる危機感

住民同士の雑談でも、「やっぱり何かおかしい」「管理費が吸い取られている」といった話題が繰り返し出るようになりました。
中には、「私たちは“実験台”にされているんじゃないか」と強く憤る人もいました。
「世帯数が少なく、専門的な知識を持つ人が少ないから狙われたのでは」という声もあり、住民たちは次第に“被害者意識”を共有するようになっていったのです。

築25年で下された決断

このような不信と怒りの積み重ねが、ついに「管理会社をこのまま任せてよいのか」という根本的な問いを住民に突きつけました。
築25年を迎えたタイミングで、理事会と住民総会は大きな決断を下します。
──管理会社との契約を見直す。

ある理事はこう振り返ります。
「この件がなければ、私たちは今も“管理会社にお任せ”を続けていたと思う。だけど、あの火災報知受信機の件が“目覚まし時計”になった。住民の意識を変えるきっかけになったんです」

今回のケースは、どのマンションでも起こり得ることです。
「安全のため」という言葉の前に、住民は往々にして声を上げにくくなります。だからこそ、冷静に事実を確かめ、他のマンションや業者と比較し、透明性を求め続ける姿勢が欠かせません。

工事そのものが悪いわけではありません。
本当に必要な工事もありますし、住民の安全を守るために不可欠な投資もあります。
問題は、「情報が一方的に管理会社から与えられ、住民が検証できないまま決定されてしまうこと」。

私たちができることは、

  • 相見積もりを必ず取ること
  • 報告書の中身を確認し、根拠を求めること
  • 「なぜ今なのか」という問いを忘れないこと

こうした小さな積み重ねが、住民の財産と安心を守る大きな力になります。

皆さんのマンションでは、次に提案される工事をどう迎えますか?
「任せきり」ではなく「一緒に考える」──それが、これからの管理組合に求められる姿勢だと思います。

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